クリニック通信

2017年5月21日卵のアレルギー

こんにちは。今日は夏日でしたね。ウサギの健兎はひんやりした床に寝そべってだらんだらんしています。私も久しぶりに仕事の入らない休日にだらんだらんしていました。4月から保育園デビューされたお子さんの受診が増えてきました。咳や鼻がずっと止まらない、毎週末に熱を出す。家の中で守られてきた小さなお子さんは、まだ、ほとんどの感染症に免疫を持っていません。集団生活では保育士さんがどんなに気をつけても次々と風邪をもらってきます。ご心配な方も多いかと思いますが、殆どは「風邪のもらいまくり」です。罹る度に免疫がついて、大きくなるに従って風邪をひく回数は減っていきます。2015年4月26日ブログ「保育園デビューの洗礼」を読んでみてくださいね。

以前、ブログで食物アレルギーのことを少し書きました。(2016年2月23日「食物アレルギーの見分け方- 即時型アレルギー」)。今回は、その中で最も頻度の高い卵アレルギーのお話です。

食物アレルギーの4割(1歳前では5割)が卵のアレルギーです。以前ブログに書いたように、典型的な即時型アレルギーであれば、殆どが摂取直後から30分以内、遅くても2時間以内に口から顔、そして全身へと赤くて痒い発疹が急に広がります。症状が強い場合は咳や嘔吐を伴うこともあります。タイムラグがあったり、発疹を伴わないなど非典型的な症状の場合は再現性(食べる度に同じ症状を繰りかえす)がある時に疑います。

症状が疑われる場合には血液検査を行うこともありますが、私たちが診断において重視するのはあくまで臨床経過です。検査はあくまで補助であり、検査が陽性でも症状が出るとは限りません。逆に検査結果が不安と混乱を招き、不要な除去につながることもあります。何も症状がないのに検査をすることはお勧め出来ません。

さて、卵アレルギーと診断された場合、全く食べてはいけないのでしょうか?食物アレルギー治療の基本は「必要最小限の除去」です。あくまで重症度次第。少量でもアナフィラキシーを起こしてしまう場合は完全除去が必要です。しかし、卵焼きを食べても口の周りに少しの発疹が出る程度なら、食べる量と調理方法を工夫すれば食べられる可能性があります。(ただ、保育園や学校の給食では事故防止のために、厚労省から完全除去を求められています)。

卵は他の食材と違い、加熱することでアレルギー物質(抗原)が低下します。生より卵焼きの方が低く、20分加熱した茹で卵はもっと抗原性が低くなります。小麦アレルギーがなければ、高温で長時間焼き上げたクッキーなどは更に安全です。また、卵アレルギーに主に関与するのはオボムコイドというたんぱく質ですが、卵白に含まれており、卵黄には殆ど含まれていません。20分加熱した茹で卵をすぐに剥いて取り出した卵黄は安全性が高くなります。

軽症であればクッキーなどの加工品や、十分加熱した茹で卵の卵黄を少量から摂取することも可能です。経口面免疫寛容と言って、少しづつ食べていくことで体が受け入れて症状が出にくくなってきます。完全過ぎる除去は慣れる機会を奪ってしまい、逆に過敏性を高めてしまう可能性も報告されています。但し、油断大敵。一気に増量したり加熱時間を減らすと強い症状が出るかもしれません。必ず医師と相談しながら少しづつ摂取を進めて行きましょう。尚、卵アレルギーがあっても、鶏肉は殆どの方が大丈夫です。

幸い赤ちゃんの卵アレルギーは大きくなると軽くなります。3歳で4割、6歳で8割の方が食べられるようになります。検査値も低くなりますが、例え陽性でもこの年齢になったら経口負荷試験(病院の中で少しづつ食べて症状が出ないか観察する)を検討しても良いでしょう。

予防のために妊娠中・授乳中に母親が卵を除去することは、効果がないばかりか栄養に偏りを生じてしまうため推奨されていません。摂取開始時期を遅らせることで、逆にアレルギーの発症率を高めてしまう可能性も報告されています。離乳食は遅らせないこと(日本では生後5か月から)、卵を摂るべき時期が来たら摂らせること。心配ならば充分に加熱した卵黄を少量から始めて、何度か同じ量を繰り返しても症状が出ないことを確認しながら少しづつ増やしていくことをお勧めしますね。

 

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