クリニック通信
2016年5月7日オタマジャクシのヒーロー
こんにちは。ゴールデンウィークはのんびり過ごせましたか?自宅近くにある「があ公園」(以前アヒルが居たので勝手にそう呼んでいる)の小さな池のほとりには、濃紺の菖蒲と白いガマの穂が絶妙なコントラストで咲いています。通りを挟んだ田圃からはカエルの大合唱が聞こえてきます。
このがあ公園の小さな池には毎年カエルが卵を産み、私はこの時期になると卵から孵ったオタマジャクシを見に足繁く公園に通います。今年も3月下旬には、池はたくさんのオタマジャクシで賑わっていました。みんな小さいながらも一生懸命尻尾を振って元気に泳いでいます。
ある日見に行くと晴天続きのせいか、池の一部が干上がり、わずかな水たまりにオタマジャクシ達が取り残されてしまいました。このままではみんな死んでしまう。何とかしてあげたいとは思うものの、休日のまっ昼間で親子連れもいるし、恥ずかしい。仕方なく家に帰ったのですが、何だか後ろめたい気持ちで落ち着きません。そして、夜、一大決心をして懐中電灯を片手に夜の公園にオタマ救出作戦に乗り出しました。でも暗すぎて良く見えません。隣の貯水池からバケツで水を汲み、池に注ぎ込むことにしました。とても怪しい光景です。不審人物として職務質問をされても言い訳のしようがありません。そうしたらいっぺんに噂になって自治会で問題になってしまうかもしれません。数杯の水を注ぎ込んでその場を逃げ去りました。
そして数日後、改めて公園に行ってみると、駄目だ、まだ100匹ほどのオタマジャクシが水たまりで行き場を失っています。一部は泥の上でへばっています。もう時間がありません。自宅に紙コップを取りに行きました。「そんなもの何に使うの?」と訝しがるおかみさんを尻目に公園に戻り、少しづつコップにすくっては水の深いところに放ちました。幸いその時の公園には人が少なかったのですが、鬼気迫る表情で異様な行動をとっている私に声をかける勇気のある人はいなかったでしょう。ただ、カメラで桜の写真を撮っている人はいました。「この陽気だし、この不景気だし、あの人も壊れちゃったのかなあ、、」と数枚くらいは撮られたかもしれません。1時間程かかり、ようやく全員の救出に成功しました。「やった!オタマにとって私はヒーローだ!」一人で勝手に満足して逃げるように帰りました。そして、、その翌日、雨が降りました。何人かの人に不審人物の不安だけ残して私の努力は徒労に終わりました。
でも、何もしなかったよりはいいよなあと、自己弁護してみます。もしかすると恩返しにカエルが竜宮城ならぬ蛙宮城に連れて行ってくれるかも。そうしたら蛙姫様と一緒に、オタマジャクシの舞い踊りを見ながらたくさんのごちそうをふるまってもらって、、、うん?カエルのごちそう=ハエ、その他小さな虫、、、やっぱりヒーローにならなくて良かったかもしれませんね。