クリニック通信
2017年4月2日おもちゃのお医者さん
こんにちは。ついに4月に入りました。庭では水仙からビオラにバトンが渡されています。呑気なクリスマスローズはこの時期になって真っ盛りです。暖かくて期待に満ちた春。でも、私の心の中では木枯らしがまだ吹き続けています。院長としての才能のなさを自覚してきたのか、時間に追われて淡々と診察せざるを得ないことに疲れてきたのか、、本当の理由は内緒です。
当院では中待合室にウサギやカエルなどのぬいぐるみが居て、声をかけると手を振り、口をパクパクさせて歓迎してくれます。毎日多くの子どもたちから「こんにちは~」と声をかけられて大忙しです。当院の人気者ですが、毎日のハードなお仕事にすぐ壊れてしまいます。動けなくなったぬいぐるみ達は他の場所に飾られてはいるものの、ちょっと寂しそうです。
ある時、たまたまショッピングモールを歩いていたところ、「おもちゃの病院」と言うのぼりが目に入りました。それは毎月定期的に開催されており、ボランティアで壊れたおもちゃを無償で直してくれるのです。早速クリニックに戻り、動けなくなったウサギ・カエル・ペンギンを持っていきました。快く引き受けてくれた数週間後、電話がありました。「直りましたよ」。早速引き取りに行くと、カエルとペンギンが以前のように元気そうに動いています。直してくれたおじさん達がニコニコと「こちらも面白かったよ~」。心が弱っていた私は思わず目頭が熱くなりました。ウサギはまだ入院が必要だそうですが、もう少しで元気になって帰ってきます。
以前は何処にでもあったおもちゃ屋さんも、大手の企業に押されてめっきり減りました。壊れたおもちゃは修理されることもなく、捨てられていきます。でも、耳の取れかかかったクマのぬいぐるみにも、口に咥えられたしわくちゃのタオルにだって、子どもたちに愛されたおもちゃには魂が宿っています。そんなおもちゃ達を直してくれるおもちゃさんは、彼らにとって命の恩人なのです。
おもちゃ達だけでなく私も少し元気をもらいました。そして、もう一つ良いことが。いつも来てくれている子どもたちが絵を描いて持ってきてくれたのです。私にとって何よりの励みは子どもたちの純粋な笑顔と「ありがとう」です。宝物が増えました。もう少し頑張れそうです。
私の夢は、おもちゃ病院のお医者さんたちのように、数は少なくともゆっくりのんびりお話をしながら笑いながら診察すること。近い将来にそんな診療がしたいなあ。
日本おもちゃ病院協会 http://toyhospital.org/ (つくば市おもちゃ協会さくらんぼ)