クリニック通信
2018年2月4日遅ればせながらインフルエンザのお話し
こんにちは。寒い日が続きますね。庭のビオラは2回の雪にすっかりやる気をなくして、ぺっちゃんこになっています。
インフルエンザはB型が大流行り。例年のBはAより勢いに乏しく、マイナーなイメージでしたが、今回は「俺が主役だ!」とばかりにAを遥かに凌いでいます。本人はやる気満々ですが、こちらとしては迷惑この上ありません。12月中旬頃から始まったので、2月中旬には落ち着いて来ると予想していますが、Aが負けじと盛り返してきて、何だかんだ4月頃まで流行は続くものです。Bは1種類、Aは2種類(H2N3、H1N1)あるので、AとBに2回罹る方も珍しくなく、運の悪い方は3回罹る可能性もあります。ワクチンは発症を防ぎ切ることは難しいのですが、重症化を防ぐ効果が期待されています。外来ではワクチン接種した方の発症は比較的少ない印象です。また、昨年度に罹った型には再び罹りにくい傾向にあります。
症状は咳鼻が少なく高熱だけど、抗ウイルス薬で比較的潔く下がるAに対し、Bはあまり高熱にならない代わりにお薬を使ってもダラダラと続き、呼吸・消化器症状を伴いやすいのが特徴です。「隠れインフルエンザ」は成人はBの初期が微熱のために気づかれにくいと言う話で、小さなお子さんはしっかりと上がります。
合併症はせん妄やけいれんなどの神経症状、肺炎、筋炎などです。
神経症状はA(H3N2)の方が起こしやすい傾向にあります。脳症などの重篤な合併症は、バラエティ番組で報道されるととても身近に感じてしまいますが、数千人に一人くらいです。「熱せん妄」は訳の分からないうわ言や異常な行動を取ることです。「目の前のものが急に大きくなって迫って来て怖い。」とか「誰かが目の前をよぎった。」とか、この子大丈夫?と心配になりますが、30分程で我に返って普通にお話が出来る場合は心配ありません。「けいれん」はクリニック通信(2017/12/3「熱性けいれんが起きたらどうしよう」)が少し参考になると思います。発熱時に体が震えること(悪寒)もありますが、呼びかけてしっかり視線が合うなら心配ありません。ただ、A型は6歳以上の子でも熱性けいれんを起こすことが時にあるので、過去に既往のある方は注意して観察しましょう。
肺炎の多くは軽-中等症です。Bは咳が目立つけど、肺炎を起こすことは滅多にありません。A(H1N1)では稀に重症化することがあります。「ヒューヒューして苦しい」「唇の色が青い」「息を吸う時に喉元が大きく凹む」場合は救急病院を受診する必要があります。また、喘息のお子さんでは発作を起こしやすくなるので、予防薬を内服しておきましょう。
筋炎はふくらはぎが腫れて押すと強く痛がります。多くの場合は安静のみで数日で自然に治まってきますが、歩くことも辛い時は病院受診が必要です。太ももから足全体がパンパンになって痛がる時は要注意です。一方、関節痛や腰痛は熱に伴う一過性のもので、解熱剤には鎮痛効果もあります。
安静にして小まめな水分補給をしていれば自然に治る病気です。抗ウイルス薬は少し早めに熱を下げて楽にするためのお薬で、合併症を予防する効果はなく、海外ではあまり使われていません。食欲は落ちますが、数日は大丈夫です。消化の良いものを1-2口でも良いので少しづつ与えてみましょう。
発熱からの時間経過が短いとウイルス量が少なくて検査が陽性に出ないことが多々あります。検出率を上げるためにはウイルスの多い鼻の奥の後咽頭まで綿棒を差し込む必要がありますが、結構痛い検査です。私たちが診断で重要視するのは「濃厚な接触歴」です。ご家族の誰かが発症し、日を置かずに別な方が発熱した場合は、まず感染したと考えて良いでしょう。その場合は敢えて検査に頼らずに診断します。ご心配でしょうし、保育園や学校に行かせてあげたい気持ちもは分かりますが、無理に検査を早めると痛いばかりで見逃す可能性が増えてしまいます。病気の種類に限らず、発熱して辛い時は安静が一番大事な治療です。朝は下熱していることが多いのですが治ったわけではありません。夕方に発熱したら翌日に検査を考えましょう。
インフルエンザの一番の問題は病気の重さではなく強い感染力です。介護の後の手洗い、患者さんの居た食卓や床、ドアノブなどを小まめにアルコール消毒をしましょう。咳やくしゃみで飛まつ物を遠くまで散らさないように、外出時はマスクをさせることも大事です。
インフルエンザの話題は過去のクリニック通信で見ることが出来ます(2012年1月30日「インフルンエンザを心配される方へ」)。ご心配な方は是非読んでみて下さいね。