クリニック通信

2018年4月15日みずぼうそう ーポックス星人の逆襲ー

こんにちは。忙しさを言い訳に2か月も更新をさぼっていたらすっかり春になっていました。道端のオオイヌノフグリは卒業を迎え、庭ではこの時期になってクリスマスローズが全盛です。公園の池ではオタマジャクシがちっちゃな足をつけ始めています。

さて、今回は「みずぼうそう」のお話です。これから春から初夏、秋に流行してきます。

みずぼうそう(水疱瘡=水痘)は英語でチキンポックス(chicken pox)と言います。発疹が毛を毟った鳥の肌のぶつぶつに似ているから付いたようです。原因となるウイルスはバリセラゾスター(varicella zoster)と言ってヘルペス属ウイルスに属します。ヘルペス銀河系、バリセラゾスター星雲のチキンポックス星、、何だか宇宙戦艦が出て来そうです。

みずぼうそうに罹ると、赤くてかゆいぽつぽつが最初は数個程出てきます。一見「虫刺され」の様にも見えますが、虫刺されは手足など肌の露出したところに集中して出るのに対し、みずぼうそうは衣服に覆われて刺されにくいはずの体やお尻を中心に、顔や手足などあちこちに出てきます。2-3日で全身にいっぱい広がり、発疹のてっぺんに水ぶくれ(水疱)を作ります。ポックス星人に体を乗っ取られた状態です。この頃は熱を出すこともあり、やたら痒がります。4日を超えると熱も下がり、発疹が黒ずんでかさぶたになってきます。5-7日程で全身の発疹がかさぶたになれば治った状態です。

水疱の中にはポックス星人(ウイルス)が大勢潜んでいて、空気感染もするため、とにかくうつりやすい病気です。集団生活内で流行が始まると、免疫が出来ていないお子さんは高い確率で感染します。ワクチンを接種した方はうつりにくいのですが、濃厚に接触すると1回接種の方では2割程発症します。2回接種した方はかなり安全ですが、それでも時々発症する方もいます。ただ、ワクチン接種をした場合は軽く済みます。潜伏期間(ポックス星人が体内に侵入して増殖し、戦闘態勢になるまでの間)は2週間程なので、接触後3日以内のワクチン接種が有効と言われています。尚、過去にみずぼうそうに罹ったことのあるお母さんから生まれた赤ちゃんは、数か月間はお母さんからもらった免疫物質のおかげで、感染を防げる可能性があります。

みずぼうそうはウイルス感染なので抗生剤は全く効きません。自分の免疫の力によって安静と水分補給だけで自然に治っていきます。また、ヘルペス属のウイルスは、抗ウイルス薬(アシクロビル)を使用するとより軽く短期間で治っていきます(現在インフルエンザとヘルペスウイルスにのみ抗ウイルス薬が開発されています)。合併症は急性小脳失調症や脳炎がありますが稀です。但し、抗がん剤や免疫抑制薬の使用などで免疫が非常に低下している場合は、重症化して命に関わることもあるので要注意です。

健康なお子さんなら危険は少ないのですが、厄介な問題があります。ヘルペス属のウイルスは人との相性が良く、治ってウイルスが完全に退治が出来たように見えても、実は残党が体の中に住み着いているのです。体力が落ちて免疫力が低下してくると、軍備を再増強して反乱を始めます。それが「帯状疱疹」です。「ポックス星人の逆襲」です。ハリウッドです。帯状疱疹は中高年層で発症することが多い疾患ですが、時々お子さんでも発症することがあります。全身に水疱の出来るみずぼうそうと違い、片側の胸など局所に集中して小さな水疱が沢山現れます。神経節で悪さをするため、ピリピリした痛みを伴います。お子さんでは比較的軽いのですが、中高年では痛みも強く長期間続きます(帯状疱疹後神経痛)。

治ってからも用心のみずぼうそう。出来るだけ体にウイルスが残らないように、ワクチンで予防をすることが大事です。1歳になったら出来るだけ早く定期接種を受けましょう。免疫を長く維持するためには2回接種が必要です。1回した接種したことのない方は、何歳でも構わないのでもう1回接種をしましょうね。

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