クリニック通信

2018年4月30日はしかが流行ってる?

こんにちは。夏日が続きますね。公園の池ではアヤメが花を咲かせ、庭のビオラは卒業シーズンです。伸び放題の庭の芝生を刈ったらヘロヘロです。健兎も床で半分とろけています。夜は田んぼでカエルがコンサートの練習に余念がありません。

麻疹(はしか)の流行が報じられています。海外から日本に旅行された方が国内で発症し、周りの人に感染したそうです。流行は沖縄など一部の地域で報告されていますが、数十人単位の小規模な流行で成人が中心です。

今回の流行は小規模ですが、20年前は国内で10万人規模で流行し、海外旅行に行った日本人が渡航先で発症して住民に広がりました。今回と逆のパターンです。同じ時期のアメリカの発症者は、人口は2倍なのにたった100人。この違いはワクチン接種制度の違いによるものでした。アメリカこの頃既に2回接種。日本では1回接種のみで接種率も劣っていました。当時はアメリカから「日本は麻疹の輸出国」と非難されたこともあります。その後、日本でも2回接種を取り入れるようになり、激減しました。最近は小規模流行はあるものの、いずれも1回接種のみの成人が中心です。

麻疹は感染すると7~10日で発症します。最初は発熱とやたらと強い咳鼻汁です。この時期は「カタル期」と言って一見風邪と見分けがつきませんが、この時期でも頬の粘膜を注意して観察すると白い小さな発疹が認められることがあります。これが「コプリック斑」と言って、診断の決め手になります。熱が3-4日続いた後に少し下がりかけますが、1日もしないうちに39度以上の高熱になり(2峰性発熱)、その時に色調が強く融合傾向のある「見た目に汚い」赤い発疹が顔から体幹にかけて一気に広がります。高熱はその後4-5日かけて自然に下がりますが、1週間以上に渡って高熱が続き、強い咳鼻汁も伴うため、かなりヘロヘロになります。インフルエンザのような抗ウイルス薬はなく、対症療法が中心になりますが、麻疹に罹患すると免疫力が一時的に低下するので、細菌による2次感染を起こすこともあります。怖いのは合併症です。細菌の2次感染による肺炎は、しっかり抗生剤を使って治療すればそれ程怖くないのですが、麻疹ウイルス自体による「麻疹肺炎」は非常に稀ですが劇症化し命に関わります。

半端ない感染力が麻疹の特徴です。「飛沫核感染」と言って、咳込んで飛び散ったウイルスは、インフルエンザでは地面に落ちますが、麻疹では空気に乗って遠くまで飛んで行きます。だから、飛行機など狭い空間に長時間一緒にいると、患者さんからは離れているはずなのにうつってしまうのです。麻疹と診断された方は解熱後3日間は隔離が必要になります。

麻疹ワクチンは高い免疫(95%以上)がつき、10年近く高い免疫が維持されます。その間に2回接種をすれば大人になっても強固な免疫が維持されるため、接種して数年のお子さんや2回接種をされた方は、罹らないか罹っても軽く済みます。ワクチン接種率は90%以上なので少なくともこどもで感染が広がる可能性は低そうです。ただ、1回接種のみの成人は、中途半端な免疫力で症状が典型的にならないため(修飾麻疹)、気づかずに外出して感染を広げる可能性があります。この数年の流行はこのパターンです。

このGWに流行地に旅行に行かれるお父さん、お母さん。ご自分の母子手帳を引っ張り出して麻疹ワクチンの接種歴を確認してみて下さい。もし、1回接種しかしていなくて、帰って1週間程で熱と咳鼻が出てくるようなら、念のため外出を控えて、お仕事に無理して行かないようにしましょうね。

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