クリニック通信

2019年2月11日謙虚なヒーロー

こんばんは。雪が降りましたね。幸い積もらなかったので、日曜診療日は早起きして雪かきせずに済みました。ゆっくり、静かに、羽虫の様に気まぐれに舞い上がったり、目を凝らすと色んな形もあったり、舞う姿はいつまで見ても飽きません。ちょっとだけ心が落ち着つきます。健兎は寒いから出ちゃダメと言う私の言葉を振りきって(窓は開けたくせに)、雪の積もるベランダに足跡を残してきました。

1月初旬に新聞の茨城版に小さく「つくば市で麻疹(はしか)が1名発生」と言う記事が載りました。それから1か月を過ぎた今、新たな発生報告はありませんでした。潜伏期間が10日前後と考えると既に終息したと言えます。非常に高い感染力を持つ麻疹の感染拡大を食い止めたヒーローがいます。つくばキッズクリニックの野末裕紀先生です。

麻疹は20年前は流行を繰り返しましたが、ワクチン2回接種が普及してから激減しました。そのため、若いお医者さんでは麻疹を診たことがない人も少なくありません。麻疹についての詳しいことは2018年4月30日ブログ「はしかが流行ってる?」をお読みください。

来院時は高熱と激しい咳に加えて派手な鮮紅色の発疹、確かに麻疹を疑わせる症状ですが、麻疹自体が稀な病気となった最近では川崎病など別な病気を考えてもおかしくありません。彼は更に麻疹ワクチン接種前であったこと、麻疹発生国からの帰国後と言う問診から麻疹を疑い、速やかに保健所に連絡し、その指示の下で、同時間帯に来院された患者さんに個別に連絡して注意を喚起し、希望する方には麻疹ワクチンの予防接種を行いました。インフルエンザの溢れる激務の最中です。正直、私は彼のように診断し、行動出来たか自信がありません。

彼のクリニックの診療システムも功を奏しました。9つの個室を待合室とした診療スタイルは感染隔離の上でも功を奏しました。当院も含めて一般的な待合室では感染を防ぐことが出来なかったかもしれません。

発生2日後に彼と飲んだ時は相当凹んでいました。「もし、自分の力不足で感染が広がったらどうしよう」。夜も眠れなかったそうです。これだけ活躍したのに彼らしい。昨年4月につくば市で麻疹が発生した時は筑波メディカルセンター病院小児科診療部長の今井博則先生が奔走し、やはり感染拡大を防いでくれました。2人とも自分の功績を自慢などしません。謙虚で優秀な小児科医がつくば市には何人もいます。彼らには遠く及びませんが、私も見習いたいものです。

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