クリニック通信

2019年3月21日スギ花粉症のおさらいと舌下免疫療法

こんにちは。春の陽気になりましたね。庭では水仙が「春が来たよ~、本当に来たよ~」とラッパのような口で触れ回っています。水曜休診の当院には久しぶりの2連休。健兎を撫でながら庭をぼ~っと眺めています。

  

暖かく、気持ちを明るくしてくれる春。一方、春が苦手な方も最近は少なくありません。それは花粉症。鼻は湧き水のように溢れ、夜は詰まって眠れないし、目はやたらと痒くて物事に集中できません。特に今日のような風の強い日は最悪です。

花粉症のことは2015年3月4日のクリニック通信「花粉症かな?」でお話をしました。今日はそのおさらいと最近、ちょっと注目されている「舌下免疫療法」のお話です。

2歳以下の花粉症は殆どいませんが、3歳を超えてくると症状を訴えるお子さんが出てきます。発症時期は花粉が飛び始める2月半ばから4月半ば頃までで、3月に症状がピークになります。5月になっても続く方はヒノキなど他の花粉の影響も考える必要がありますが、スギよりも軽い印象です。花粉症の一番の特徴は「痒み」です。花粉のついた粘膜で炎症が起こりますが、一番くっつきやすいのが目。鼻より目の痒みから始まっている方が多いように思います。尚、皮膚は粘膜よりもガードが堅いので、目の周り以外には痒みは生じません。体や手足を痒がっているなら冬の乾燥肌から生じた湿疹です。鼻水は透明で粘調性の乏しい流れるような鼻水で、やはりムズムズした痒みを伴います。色がついてねばねばしている場合は風邪の鼻水でしょう。

治療には抗ヒスタミン薬の内服が中心で、眠気などの副作用の少ない第2世代のものがお勧めです。出来れば花粉の飛び始める前の2月初旬から開始した方が、少し楽に過ごせるでしょう。補助的に喘息の予防にも用いられるロイコトリエン拮抗薬を併用することもあります。それでも辛い方には局所療法として、点鼻薬や点眼薬も使用します。点鼻薬はステロイド点鼻薬がメインで副作用は殆どありません。鼻閉が強い場合は血管収縮作用のある点鼻薬(炎症時は鼻の血管が拡張して水成分が細胞に流れ込むため粘膜がむくむ)を頓用として用いることもあります。点眼薬は副作用の少ない抗ヒスタミン薬の点眼を主に用いますが、ステロイド点眼薬の方がよく効きます。ただ、ステロイド点眼薬は漫然と使い続けると稀に緑内障と言う副作用を起こすこともあるので、長期に使用する場合は眼科での管理も必要です。

大事なことは花粉をくっつけたままにしないこと。いくらお薬を使ってもくっついた花粉をそのままにしておくと、症状は和らぎにくいものです。花粉は粒子が大きいので、マスクは役立ちますし、眼鏡で隔てるだけでも大分違います。ただ、それでも花粉は隙間から侵入してきます。外から帰って来たらとにかく顔を洗うことです。アレルギーは「即時型」と言うくっついてすぐ出る反応と、遅延型と言う数時間後に再燃する炎症があります。寝る頃に症状が増えるのはこのことも関係があります。出来れば洗面器の中で目をパチパチさせたり「鼻うがい」も出来れば望ましいです。また、衣服や髪の毛にもいっぱいついています。帰宅後はすぐに着替えて早めにお風呂に入ることもお勧めです。この時期だけは布団や洗濯物も室内で干しましょう。

免疫療法は実は40年以上前からありました。アレルギーを獲得した体はアレルギー物質を取り込むと、炎症を起こす物質を多量に産生・放出する反面、炎症を抑える物質も産生しています。それを利用して、症状の出ない程度の微量のアレルギー物質を、敢えて毎日取り込むことで炎症を抑える物質を増やして、より多量のアレルギー物質にさらされても症状を起こしにくくする方法です。昔は喘息に対する「減感作療法」として、私も喘息だった小学生の頃に治療を受けたことがあります。ただ、喘息は気道感染症などの他の要因も影響することや、当時は頻回に注射する方法しかなかったこと、時に重症なアレルギー症状を誘発してしまうことから、その後廃れてしまいました。最近になって難治性の食物アレルギーに対する症状軽減方法として見直されてきました。食物アレルギーでは、個々に負荷する物質や量が違うことや、重症例には重いアレルギー症状を誘発してしまう危険もあるので、設備の整った専門の施設で慎重に行う必要があります。一方、スギ花粉症では投与する物質が1種類だけであり、負荷量も調整しやすく、注射のような苦痛の少ない「舌下免疫療法」が確立されました。スギのアレルギー物質を極微量に含んだ「舌下薬」(口の中ですぐに溶ける錠剤と液体の2種類あります)を1日1回、舌の裏に1分間に含んでから飲み込みます。それを「毎日、花粉症のない時期も含めて最低3年間以上」行います。70%の方の症状が軽減され、中止後も5~8年効果が持続します。副作用としては舌の裏や唇が腫れる。口の中が痒くなるなどの軽度のアレルギー反応が2.8%ほどありますが、アナフィラキシーの様な重篤な反応は稀とされています。適応は薬だけでは症状が抑えきれない方で。重症な喘息や食物・薬剤アレルギーがなく、かつ、一定時間口に含むなどの指示を守れる年齢(学童期以後)であることです。花粉症の時期はアレルギー反応が起こりやすくなるため、治療開始はスギ花粉の飛散が終わった時期以後からになります。有効性の高い治療ですが、全ての人に効く保証はありません。ヒノキなど他の花粉症には効きません。効果発現には1~2年かかります。毎日・3年間続ける覚悟と根気が必要な治療ですが、早期からお薬を始め、十分な日常生活上の予防を行ったにも関わらずとても辛かった方は、考えてみても良いかもしれませんね。

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