クリニック通信
2019年8月21日南国ディナー
こんにちは。猛暑の夏もひと段落ですね。「カナカナカナ、、」夏を惜しむ蜩の声は少し減り、夜はクビキリギスの鳴く「ジ〜〜ッ」の中に「リーッ、、リリーッ、、」「夏が終わるよう、もうすぐ終わるよう」と、秋の虫たちの声が混じり始めました。
頭からぷすぷすと煙を上げながら怒濤のお盆診療を終らせて、今、南国のレストランで激しく降り続く雨をボーっと眺めています。なかなか止みそうにありません。色々な国の人達が、私の顔をチラチラ見て呟いています。「NANDE AOKI GA KONNATOKORONI IRUNDA? AITUGA KITAKARA AME YAMANAIJANAIKA! MATTAKU AMEOTOKO TOIU YATUHA,,,」。 こんなことを言っているに違いありません。
そう、今、私はとある南の島に来ています。日本語のあまり通じない国です。何と言うアウエイ感!途方に暮れています。医者だからって英語が出来るとは限りません。いや、8月に開業した流星台こどもクリニックの工藤先生は留学歴あるので英語がペラペラです。黒澤先生はオーストラリアに1人で行ってきたとシレッと言っていたので多分出来るでしょう。「ワイハに行ってきた〜」と死語を口にしていた野末先生は怪しいものです。私の過去は英語のコンプレックスに満ち満ちています(2017年10月 「涙の国際学会」)。NOVAは忙しくてリタイアしてしまいました。言葉への自信のなさは、全ての行動に緊張と遠慮と諦めを伴ってしまいます。リラックスしに来たんだか、ストレスを溜めに来たんだか、最早わかりません。
オプションの申し込なんて命がけです。食事に行くだけでも緊張し、お店の人の親しげな声掛けは頭の中を素通りし、ジャパニーズスマイルいっぱいに、yesやokと答えるだけです。ツアーに含まれていたはずの特別ディナー。レストランでは普通の席に案内されて、いつものビュッフェ。おかしいぞ。必死に伝えてみましたが、私のモゴモゴな声は緊張で更に不鮮明となり、相手の早口英語は理解できず、つい出てしまった言葉は「ok,ok,,,」でした。
カフェでは、モデルのようなウエイトレスさんから「How was it ? 」(お食事どうでしたか?お口に合いましたか?)と聞かれて、慌てて「Finish 」(食べ終わった)とだけ言ってしまいました。あれだけの美人さんです。きっと女優さんで、まだデビュー仕立てなのでアルバイトをしているのでしょう。あまりの冷たさに涙でボヤけた月を眺め、でも、悔しさを噛み締め、女優になるための決意を新たにします。有名になったら、記者のインタビューに「無名だった頃、バイト先で日本人の親父に愛想なくされた。」と言うかもしれません。国際親善に多大なる溝を作ってしまいました。
他の国の方達は自由です。もしかすると語学力に大きな差はないのかもしれませんが、それを恥ずかしいと思い、遠慮をしてしまう気持ちが少ないのでしょう。そう、私たちは日本人は、変なプライドで出来ない事を恥じてしまう、この気持ちが問題なのです。それは歳を取る程強くなる様です。以前はもう少し積極的だった。一方、子どもたちは遠慮を知りません。恥ずかしいと思いません。だから、自由でどんどん伸びて行きます。私達は、いや、少なくとも私は、子どもから、異国の人から学ばなければなりませんね。
今度、ウエイトレスさんに何か聞かれたら絶対に「great!」とか「amazing!」とか言ってやろう!でも、「メニューは?」と聞かれたのにこう答えてしまったら、困るだろうなあ。そう考える時点で既に足踏みが始まっています。