クリニック通信

2012年4月4日動物を飼うという事

こんにちは。先日はすごい風でしたね。でもようやく春らしい暖かさになって来てインフルエンザのような流行かぜも治まってきたようです。

喘息のお子さんのいる家庭で動物を飼うかどうかを悩まれている方も多いと思います。以前は動物飼育などもってのほかと言う風潮でしたが、最近は日本のアレルギーの学会でも意見が分かれてきました。海外では喘息の方でも犬猫を飼っている率は日本より遙かに高く、疫学的には家畜のいる農村の方が都市部より喘息やアレルギー疾患の発症が少ない事が証明されています。1990年代から乳児期における微生物の感染機会が低すぎる環境では免疫系がアレルギー側に傾くでのはないかと言う「衛生仮説」が学会で良く議論されました。ペット飼育の是非に結論はまだ着いていませんが、毛のある動物には喘息の主なアレルゲンである「家ダニ」がたくさん付いているため、飼うことにはまだ消極的意見が少なくありません。

一方、動物を飼う事は気持ちを通い合わせる事で心を癒し、世話をすることで命の大切さに気づかせ、優しい気持ちを育てる意味で良いこともたくさんあります。私も喘息がまだ落ち着ききっていない小学生の時に拾ってきた犬を飼っていたことがあります。屋外で飼っていましたが、接する事で発作が起きるわけでなく、朝の散歩に毎朝連れて行く事でむしろ体力がついた気もします。数年後に病気で亡くなる時は家族で泣きました。生き物の死に接する事は悲しいけれど大切な経験であったと思います。

アレルギーには個人差が大きく、例え検査値が陽性でも接することで全く症状のでない方もいれば強い症状の出る方もいます。明らかに接すると症状の出る方や重症な方に飼う事をお勧めすることは出来ませんが、全く症状誘発もないのに検査値だけで今まで大切に飼っていた動物を手放す事もどうかと思います。飼い方によっても違ってきます。室内飼育はダニ量の増加に関与しますが、室外飼育が可能であればその影響は抑えられます(毛の多い動物たちにとって果たして人間と同じ環境が適切かと言う問題もあります)。一律に良い・悪いを決めるのは困難で、本当に症状に関係するのか良く見極める必要があります。

大事な事は飼う事のプラス面とマイナス面をしっかりと考えてその家族としての結論を出す事、飼う時には掃除の徹底など、そのためにやるべきことを家族全員(子供はもちろんお父さんも)がきちんとやる覚悟を持ち、人間の自己満足ではなく動物の気持ちを充分に考えた愛情を注ぎ、最後まできちんと責任を持つという事でしょうか。その世話を押しつけ合うことや、可愛いからと動物にとって不快な格好をさせること、ましてやちょっと問題があるからと、解決努力もしないで捨ててしまうことは動物にとってはもちろん、こども達にとっても深い心の傷を残してしまうかもしれません。(青木健)

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