クリニック通信
2020年11月15日ワクチンバキュン
こんにちは。今日は晴れて気持ちの良い日ですね。お散歩日和です。毎週通る散歩道には青い空を背景にキャベツ畑が広がり、モンシロチョウがひらひらと彩を添えてくれます。ふと反対側を見るとこちらもキャベツ畑?でも色が違う。よく見るとこちらがキャベツで、今までキャベツと思い込んでいたのは白菜畑でした。店先に並んでいれば分かるものなのに、難しいものですね。(みらいの森キッズクリニック永吉先生:「え~?先生、普通分かりますよ」)。健兎にはどちらでも良いようで、謎の葉っぱを食べようとしています。
昨日は11時30分から17時までの5時間半、休む間もなくワクチンを接種し続けました。終わった時は椅子から立ち上がれなくなっていました。頭を振るとめまいがします。一見簡単そうに見えて、ワクチン接種は非常に神経を使います。特に小さいお子さんへのワクチンは大人の10倍以上大変です。
まず母子手帳を見て接種歴に漏れがないか・接種間隔に問題はないか・適応年齢に達しているかを確認し、自作の予防接種スケジュール表をお渡しして次のワクチン予定の説明を行います。用意したワクチンの種類・有効期限・溶解具合・接種量・取り付けた針の緩みがないかを確認し、問診票をチェックしてサインして、カルテに接種部位を入力します。ふ~。で、それからが本番です。
既に診察室に入る前から盛大な泣き声が聞こえてきます。診察室の取っ手にしがみついて入らない子、兄弟を診察している隙に診察室を抜け出して待合室の奥まで逃げ出す子、診察室の隅っこに座り、近くのベビーベッドにしがみついて決してその場を動こうとしない子もいます。お母さんもお父さんも困って、色々声をかけてみますが「絶対嫌っ!」差し延べる手にバチン。何をされるのか分かる3~5歳の子が一番難しいのですが、時にもっと大きい子も嫌がります。その場合は少し待合室で気を静めてもらってから再チャレンジです。「痛くしないでね」「優しくやってね」「1秒でやってね」プレッシャーが高まります。一方、良く分からずニコニコ笑いかけてくる赤ちゃんも少なくありません。それはそれで心が痛みます。
ワクチンは押さえが大事。小さい赤ちゃんでも必死になるとすごい力が出ます。思いっきり体をそらせて、するっとお母さんの腕の下に抜け出してしまいます。お母さんにがっちりしがみついて、髪の毛を引っ張り、決して離れてくれません。腕を上下左右にぶんぶん振ったり、もう片方の手が飛んできたりします。接種寸前まで平気に見えていたのに突然豹変する場合もあり、一瞬の気も抜けません。
いよいよ接種。動きによって針が抜けたり、皮膚を傷つけることのないように、少しでも体内に針の留まる時間を短くする必要があります。動き方を良く見て、一瞬動きが止まったその瞬間に、皮膚を進展させて、毛細血管を避けて、痛点が少ない深めの角度にスッと刺し、その瞬間に動いたらその動きに合わせて持ち手を移動しつつ素早くチュッと注入します。まさにスナイパーのようです。実際は痛覚細胞や皮下の毛細血管が見えるわけではないのですが、少しでも痛くないようにそのようにイメージして接種しています。
実はワクチンは種類によって痛みが違います。針の痛みより入る薬液の違いです。一番痛いのはヒブ・肺炎球菌・4種混合で、どの赤ちゃんも泣きます。でも痛みは続かず、診察室を出る頃には泣き止んでくれます。見た目の割に意外と痛くないのがBCG。いっぱい針がついていますが、周りの輪っかに阻まれて針は殆ど皮膚に入りません。強く押し付けられてびっくりするだけです。あまり痛くないのは麻疹風疹・おたふく・日本脳炎・B型肝炎で、赤ちゃんでも機嫌が良ければケロッとしてます。水ぼうそうとインフルエンザは入った時に少しだけ痛いかな。でも少しです。遊んでいる最中に転んだりぶつけたりするより遥かに痛くありません。みんなが泣く本当の理由は「痛くて怖い」イメージです。お母さんの不安も赤ちゃんに伝わって一緒に不安になっています。怖いと神経が集中して余計痛く感じてしまいます。だから、ワクチンを接種する時は注射器は出来るだけ見せないようにして、診察室に音楽を流して、アニメを見せて、みんなでテンションを上げて挑みます。そして、終わったら褒めちぎります。「頑張ったねえ、強かったねえ」。
大泣きして大暴れしていた子が、接種した瞬間に「あれ、痛くない」と言う表情になって泣き止む時、お母さんに「痛くなかったぁ」と自慢している時は、私も心の中でガッツポーズをしていますよ。