クリニック通信
2021年2月12日風邪?それとも花粉症?
こんにちは。まだまだ桜の芽は小さいものの、晴れた日の日中は少しずつ暖かくなって来ましたね。朝は地面にへばりついていたビオラも少しほっとしたように頭をもたげています。。一方、いつもは寒くてもベランダ探検に出ていた健兎も「冷たい風いやぁ」と窓口で戸惑っています。
春が近づくとともに風の強い日も増えてきました。遠くから杉花粉が飛ばされてきたのか、1月下旬から目のかゆみを訴えてくる子がちらほら来ています。杉花粉はこの地域では毎年2月頃から飛んできます。ピークは3月頃でくしゃみと目のかゆみを訴えて受診する方が一気に増えてきます。今年は新型コロナウイルスの流行もあって、テレビ番組で話題にされることもあるようです。
もともとこどもは咳や鼻水が付きまとうものです。冬の間は乾燥して冷たい空気が鼻の粘膜を荒らし、刺激します。血管運動性鼻炎と言って、自律神経の影響で気温差に反応して鼻炎を起こす方もいます。起床時のくしゃみもその一つ。眠っている間は静かだった呼吸は目覚めた時に深呼吸に変わります。冷たい空気が一気に鼻に流れ込んで粘膜を刺激してくしゃみを連発し、口を開いて眠っていた子は喉も乾燥しているので咳込みます。集団生活をしているこどもは風邪をもらいやすくなります。鼻がかめなくて、鼻水をためやすくて、いつまでも垂らしたり詰まらせています。鼻と連動して目やに・涙目も増えてきます。寝てから体が温まってくると鼻粘膜の毛細血管が拡張してむくみ、鼻水成分も染み出しやすくなります。小さい子ほど鼻の穴が小さいので詰まりやすく、鼻が詰まると喉の後ろに鼻水が垂れ込んで痰になって咳も出ます。寝た姿勢ではより鼻水が垂れ込みやすくなるので、寝てからしばらくすると咳込んで来るのです。小さなお子さんは痰の出し方を知らず、咳のこらえ方も知らず、思いっきり咳をします。胃と食道の弁が緩いので、溜まった痰をむせ込んで出す拍子に、一緒に吐いてしまうことも少なくありません。そのため、鼻がかめて痰をうまく出せる大人に比べ、こどもは症状が目立って見えてしまいます。
風邪と花粉症、どちらもくしゃみ鼻水・目やに、頭重感などを伴いますが、違いはいくつか挙げられます。まず、年齢。最近は花粉症も低年齢化して3歳頃から発症する子もいますが、1歳前後で発症することは殆どありません。次に鼻水の質。風邪の鼻水は最初は透明ツルツルですが、数日するとネバネバして色も混ざってきます。花粉症は蓄膿症を合併しない限りいつまでも透明ツルツルです。激しい咳込みや発熱は風邪特有の症状です。そして、環境と経過。花粉は外に舞うもの。天候にも左右されます。晴れた風の強い日に屋外で遊ぶと、毎回のように症状が強くなる場合は花粉症が気になります。風邪は最初の1週間で症状が強くなりますが、次の風邪をもらわなければその後は少しづつ軽くなっていきます。花粉症はシーズンが過ぎ去るまでいつまでもダラダラ続き、毎年同シーズンに症状が反復することも特徴です。外で干した布団で寝ない限り花粉症は夜の方が少し楽ですが、風邪ひきは夜から症状が増えてきます。決定的な違いは痒みの有無です。風邪は目やには出ても痒くはなりません。花粉症は目や鼻の粘膜に痒みを伴って来ます。尚、皮膚は花粉を通さないので、目の周り以外の皮膚が痒くなることはありません。
花粉症の疑いが強い時にはアレルギー検査も行いますが、花粉症の診断はある程度症状で可能です。針を刺して血を取ることはお子さんにはとても怖くて痛いものです。ある程度聞き分けの出来てくる小学校に入ってからくらいからがお勧めです。
花粉症の対処法や治療は以前書いたブログを参照してみて下さい。(2015年3月4日「杉花粉症かな?」2019年3月21日「スギ花粉症のおさらいと舌下免疫療法」)。基本はくっついた花粉を洗い流すこと。外から帰ってきたらまず流水で手を良く洗って花粉とウイルスを洗い流し、それから目の周りと鼻の下を中心に顔を洗いましょう。花粉症の予防法は新型コロナウイルスの予防法に共通します。手洗いとマスク、アイゴーグルは花粉症も軽くできます。最も大事なことは、くしゃみや鼻水で困っている方に偏見の目や差別的な言動を決して口にしないことです。新型コロナの流行は人の心さえも歪めてしまいました。歪んでしまった心は治りにくく、発してしまった心ない言葉は発した人自身をも傷つけるでしょう。新型コロナの小児発症率は低く、集団感染の事例もごく僅かです。明らかな接触歴がない限り、こどもの咳鼻水はコロナの心配がありません。コロナも風邪も花粉症も、罹った人はみんな困っています。花粉症は杉だけなら4月半ばには楽になります。コロナもワクチンが進めば、少しは冷静さを取り戻すきっかけになるでしょう。それまではくしゃみをする人には温かい目で接してあげて下さいね。