クリニック通信

2021年8月21日ミルク(牛乳)のアレルギー

こんにちは。また梅雨⁉と思われるような天気も回復しました。まだまだ暑いですね。花壇の日日草たちは、降り続く雨に「もう、水、いらね~」とぼやいていましたが、今日は「暑い!熱中症になる!水くれ、水!」と騒いでいます。健兎は今日もエアコンの利いた隣の部屋でお昼寝。私は暑い部屋で健兎の部屋から流れてくる冷気をおすそ分けしてもらっています。

食物アレルギーについては以前クリニック通信で何度かお話をしました。(2016/2/13:食物アレルギーの見分け方、2017/5/21:卵のアレルギー、2019/11/6:疑り深い警備部長と「白身玉子」さんー食物アレルギーのお話ー、他)今回はミルク(牛乳)のアレルギーのお話です。

ミルクアレルギーは卵についで多く、食物アレルギーの原因食材の約2割を占めます。発症時期は殆ど1歳未満で、典型的なタイプは即時型アレルギーです。それまで母乳栄養のみだったお子さんに初めてミルクを飲ませたところ、2時間以内(殆どは30分以内)に口の周りから顔、首、体へと、蕁麻疹の様に赤く盛り上がった発疹が広がります。症状の強い方はその後に吐いたり咳込んだりすることもあります。ただ、口の周りの発疹は荒れやすいので、アレルギーが関係なくとも湿疹ができることもあります。見分け方は2016/2/13ブログも参考にお読みください。症状経過(時間的一致+再現性)と検査から総合的に評価して乳アレルギーと診断された場合は除去が必要になります。しかし、赤ちゃんにとってミルクは大事な栄養源。母乳が出にくくなっているお母さんもいますし、園では搾乳のお預かりが難しい場合もあります。その場合にはアレルギー治療乳を代替品に用います。幾つか種類があり症状の程度によって主治医と相談して決めることになります。市販されているペプチドミルク(E-赤ちゃん、アイクレオHIなど)は部分的加水分解乳と言って、低アレルゲン化しており軽症には使用できるかもしれません(治療乳ではありません)。乳は様々な食品に含まれていることがあるので、万が一の誤食のために抗ヒスタミン薬を処方してもらっておいても良いと思います。アナフィラキシー歴がある体重15kg以上のお子さんならエピペンも必要です。

食物アレルギー治療の基本は「自宅では必要最小限の除去」です。軽症な方であれば症状が出ない程度の摂取は、むしろ続けることが推奨されています。過去に何度も摂取して症状が出なかった量以内なら続けても大丈夫です。ミルクを飲ませる時は量を予め測っておいた方が良いでしょう。

乳は卵と違って加熱しても抗原量(アレルギーを起こすたんぱく質の量)は殆ど変わりません。焼き菓子(ベイクドミルク)は少しだけ低下します。ヨーグルトは牛乳とほぼ同じ抗原量です。30mlの牛乳が飲めるなら同量のヨーグルトは食べられます。バターは抗原量が非常に少なく、牛乳5ml飲めるならバター10g程度は調理に使用しても大丈夫です。パンは製造方法で使用される牛乳の量が大きく異なるので、何とも言えませんがPASCO社の「超熟」6枚切りなら1枚の乳含有量は0.1ml程度です。注意するのはチーズで抗原量が5-6倍あります。スライスチーズ1枚は100mlの牛乳に相当するので注意してください。

牛乳も卵と同様に成長につれて軽くなっていきます。3歳頃には半分近い方が普通に摂取出来るようになります。乳児期に症状のあった方は半年~1年後にもう一度受診してみましょう。一方、重症な方はなかなか良くなりにくく、少量づつ食べ続けて体に受け入れさせる経口免疫療法も、他の食材よりも効果が低い傾向にあります。アナフィラキシー(ヒーヒーして苦しい。ぐったりなど)を起こしたことのある方は医師と相談しながら慎重に対応する必要があります。

乳児期早期には特殊な起こし方もします。「新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症」と言って頻度は0.13%と稀です。ミルクを飲んで1-4時間程すると何度も吐き続け、下痢や血便を伴う例もあります。乳が最も多く、大豆や卵黄などで起こすこともあると言われています。即時型アレルギーと違って発疹は伴わず、発症までの時間も遅い傾向があります。アレルギーを起こす機序が違うので一般的なアレルギー検査では陽性になりません。リンパ球刺激試験と言う特殊な検査が比較的有効と言われていますが、必ず陽性になるとも限りません。負荷試験も摂取から発症までの時間がかかり過ぎるので、外来では困難です。証明する手段が乏しいので病歴で判断するしかありません。再現性があるかどうか。赤ちゃんはもともと吐きやすいので、1回吐いたからすぐアレルギーと思い込むと全てのものが食べられなくなってしまいます。同じ量を飲んでも吐いたり吐かなかったりと、再現性が乏しいのであれば考えにくくなります。何度繰り返しても一定量を超えると必ず吐く場合は受診してみましょう。抗ヒスタミン薬も効きにくいので、治療は除去かアレルギー治療乳への変更のみです。ただ、このアレルギーは殆どが治る(寛解)とも言われています。1年経ったら再評価してみましょう。食べられるようになっているかもしれませんよ。

 

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