クリニック通信
2023年9月13日高熱怪獣アデノドン
こんにちは。9月になっても暑い時期が続きますね。庭のサフィニアもサルビアもすっかりやる気をなくしています。
発熱性感染症が比較的落ち着くはずの9月ですが今年は違うようです。コロナ星人、インフルエンザウルス、アデノドンの3大怪獣大決戦が繰り広げられています。
コロナはXBB.1.5変異株からEG.5.1が主流になり、更にBA.2.86まで出てきたようです。ドコモ?au?機種変更が頻繁でもう覚えられません。感染性が強まり大人もこどもも、私同様2回罹る方もいますが、デルタ株の頃よりは軽症化して多くは3日以内に熱が下がります。
インフルエンザはA型が流行拡大してコロナを追い抜き、学級閉鎖も出てきました。この時期の流行は私の経験上今までなかったことです。インフルエンザはA型2種+Bの3種類の株が時期をずらして流行ります。冬はどうなるんだろう?インフルエンザの発熱は4日前後ですが抗ウイルス薬を使用すると1日程早く解熱します。ワクチンも軽症化に役立ちます。ただ、インフルエンザは合併症が多いので注意が必要です。詳しいことは2012年1月「インフルエンザを心配される方へ」2018年2月「遅ればせながらインフルエンザのお話」2019年1月「インフルエンザのおさらい」をご参照ください。
もう一つ参戦しているのが昔から居るアデノウイルスです。51種類もの株を持つ古強者。毎年梅雨明けからお盆まで流行しますが、今年は何故か9月に入っても流行しています。アデノウイルスの特徴は熱が「高い」「長い」です。40℃の高熱が5日前後続きます。最も発熱期間が長く抗ウイルス薬もワクチンもありません。幸い重い合併症を起こすことは稀で、高熱の割に比較的元気で特別な薬を使わなくても安静と水分補給だけで自然に治ります。インフルエンザと同じ飛沫感染で空気感染はしません。ただ感染力は強く、鼻水・唾液・涙・便から感染します。プールでもうつる可能性があることから「プール熱」との異名もあります。タオルの共用は避けましょう。ただ、プールの後に熱を出したからアデノとは限りません。多くは他の感染経路で手洗いの徹底が予防の基本です。大人が罹る時もありますが、基本はお子さんが中心です。
症状から来るもう一つの別名が「咽頭結膜熱」。高熱に加えて扁桃腺が真っ赤に腫れ上がって膿がつき、目が真っ赤に充血します。もう一つの特徴が血液検査での炎症の数値が高いこと。熱が長引いて扁桃腺が腫れて炎症反応が高い時は抗生剤の必要な「細菌感染」を疑いますが、アデノに限ってはウイルスのくせに炎症反応が跳ね上がります。細菌感染のふりをしているのです。古株ウイルスなので戦略に長けています。武田信玄です。油断しているとだまされて不必要な抗生剤を使ったり入院依頼をしてしまいます。だから、この時期に発熱が4日以上続く場合は血液検査に加えてアデノウイルスの検査もします。アデノが陽性なら熱が長くても炎症の数値が高くても「もう少しで治るよ~」と言ってあげられます。すると5日目6日目には「お熱が下がって元気になった~」と言ってくれます。ただ、解熱翌日から2日間は人にうつす可能性があるので保育園にはいかないようにしましょうね。
コロナ大旋風の後も5月に始まった夏風邪バトルロワイアルから続く3大怪獣大決戦。予約枠を最大限に増やしても受診依頼が殺到して息をつく間もありません。「経験上もう少しで落ち着くよ~」の言い訳は外れまくり、疲れ切ったスタッフにはもはや通用せず、牛タン弁当をおごってしのいでいます。この状態でもうすぐコロナワクチンやインフルエンザワクチンが始まります。次はウナギ弁当で誤魔化す?その次はお寿司?院長の財布が空っぽになる前には落ち着いてほしいものです。