クリニック通信
2013年10月2日咳の続くお子さんへ
こんにちは。今日も朝から雨ですね。3日後に予定されている土浦花火競技会は大丈夫かなあ。天下の雨男である私が行こうと思った翌日から天気予報が晴れから雨に変わったような気がします。やっぱり私のせいかも、、ごめんなさい。
秋はライノウイルスを筆頭に咳鼻のしつこい風邪のオンパレードです。小さなお子さんは免疫が未熟で感染しやすく、ばい菌が消えても気道粘膜の修復に時間がかかるために咳鼻が長引きます。バリアの弱った粘膜は新たなばい菌に感染しやすく、集団生活では感染機会が倍増します。また、こどもはうまく鼻をかめない上に鼻腔が狭いため、鼻水の殆どが喉に垂れ込んで痰が絡みます。大人では鼻をかんで済むことも、こどもではしつこい咳の原因となります。そのためこども達は咳が治まる間がありません。大人のように咳を我慢せず、胃と食道の間の弁がゆるいため思いっきり咳こんで吐くことも少なくありません。喉に炎症がある時は、活動性が高くて呼吸の荒い日中や、鼻や痰が喉に垂れ込んでくる就寝後1~2時間、寝返りで痰が移動し静かだった呼吸が急に深くなって喉が刺激される起床前後に咳が増える傾向にあります。
この時期のお子さんの咳は2週間を超えることも少なくなく、発症初期は咳き込んで夜に起きることもありますが、大半が軽症で済みます。本当に長い咳(慢性咳嗽)の定義は2か月で、大人ではその半分が咳性喘息やアトピー性咳嗽が原因ですが、学童期以下の小児には必ずしも当てはまりません。しかし、経過によっては気管支に炎症が進むこともあり、喘息好発シーズンでこの時期に初めて発作を起こす子もいるので、下記に示した表の症状に該当する場合は受診をお勧めします。特に呼吸機能の未熟な生後5か月未満で、一晩中咳で眠れずにむせ込んでミルクが殆ど飲めない場合は注意が必要です。胸からヒューヒューしたハイピッチな音が聞こえて、息を吸う度に喉元が大きく凹む場合、座っていないと苦しくて眠れない場合は夜間でも救急病院を受診しましょう。
喘息の予防薬は症状がなくても止めるべきではありません。喘息は見た目に症状がなくても気道の炎症は続いており、容易に発作が再発します。この時期に入院する喘息の多くは予防治療をしていないお子さんです。一方、発作薬を長く続ける必要はありません。抗生剤は医師のOKが出るまでは続けた方が良いでしょう。但し、気道感染症の90%近くはウイルス感染によるものであり、ウイルスには抗生剤は不要です。例え細菌感染でも自分の免疫である程度退治できるので、最初から飲む必要はありません。では感冒薬はどうでしょうか?感冒薬は対症薬であり、その目的は「辛い症状を少しだけ楽にする」ことです。風邪を治すのは自分の免疫力であり対症薬ではありません。見方を変えれば辛い症状でなければ漫然と飲み続ける必要はないことになります。咳も鼻水もばい菌や不要なものを体から追い出すための防御反応です。咳止めを強くし過ぎると痰がうまく出せなくなったり、鼻水止め(抗ヒスタミン薬)も鼻水や痰の分泌を抑える反面、ネバネバして外に出しづらくなる場合もあります。飲み続けてメリットがあるのは痰を出しやすくする去痰薬くらいです。症状の強さに応じて医師に必要な薬を選んでもらい、本人が元気で気にしていない程度の軽い症状であれば少し様子を見ることも一つの選択です。
その代りに治りやすい環境を作ってあげることが大事です。加湿や入浴は湯気が痰や鼻水をゆるくして外に出しやすくさせる効果があります。赤ちゃんであれば入浴後や寝る前に鼻を吸ってあげると楽に眠れる場合があります。安静と睡眠は免疫力を高めるためには最も重要です。一晩中咳で眠れなかったのに日中外出させていると、睡眠不足に疲れが加わって免疫力を落とすうえに新たな感染機会を増やし、症状の悪化につながるかもしれません。注意すべき症状を見逃さないこと、適切な環境作りをしてあげることが治るための一番の早道かもしれませんね。