クリニック通信
2014年11月24日鼻水を制する者は咳をも制す
こんにちは。
今日はどんより、寒い日ですね。雨が降らないうちにウサの好物のタンポポを摘んで来なければ。
以前ブログでも書きましたが、毎年秋~冬は咳鼻水のしつこい時期です。長引く強い咳やゼーゼーする場合、時には気管支炎や喘息が原因することもありますが、実はそのほとんどが鼻水に起因します(後鼻漏症候群)。
気道感染ウイルスは主に鼻の粘膜から侵入します。鼻が炎症を起こすと粘膜がむくみ、ウイルスを洗い流すための鼻水が増え、外に追い出すためにくしゃみが出やすくなります。ウイルスを食べる免疫細胞が鼻水の中に増えると黄色くなってきます。これらの症状は体のばい菌を追い出すための大事な防衛反応です。鼻水が出れば出るほど免疫が頑張ってばい菌を追い出していることになります。
ただ、小さなお子さんでは上手く鼻がかめず、鼻の穴も小さく、奥には溜め込むための空洞もあるので、容易に鼻水は出ていきません。前に出るより後ろに溜まりやすく、寝た姿勢では喉の奥に流れ込み、それが痰になってむせ込みます。だから、寝てから咳が増えるのです。こどもは痰を出すのが下手で、胃と食道の弁もゆるいため、むせ込んで吐くことも少なくありません。大人であれば鼻をかみ、痰が溜まれば吐きだせば良いのに、お子さんはそれがうまく出来ないので、症状が強く見えてしまう傾向にあります。喉の奥でゴロゴロした音が聞こえる場合は、まず鼻水が喉に垂れた音と思って良いでしょう。時に喘息様のヒーヒーした音が聞こえることもありますが、鼻を吸うだけできれいに消えてしまうこともあります。免疫が未熟で粘膜の炎症の残りやすいお子さんは鼻症状も長引きやすく、この時期のように複数のウイルスが発生している時期は、症状が消える前に次のウイルスに感染してしまいます。集団生活では風邪ひきの頻度が倍になります。だから長引くのです。
残念ながら鼻水に有効性の高いお薬はありません。せいぜい去痰薬で鼻水の粘張性を緩くして出しやすくするくらいです。アレルギー性鼻炎に使う抗ヒスタミン薬を、鼻水の分泌を少し減らす効果を期待して処方することもありますが、有効性は乏しく鼻水の粘張性を増やしてしまうこともあります。お薬を漫然と飲み続けることに意味はありません。
鼻水を物理的に外に出してしまうことの方が遥かに有効です。そのためには加湿して鼻水を緩くすることが必要です。特に乾燥する冬の時期、暖房を使う時は加湿が欠かせません。軽い風邪なら若干の発熱に係らずにお風呂に入った方が、体をリラックスさせ、体の循環を良くして免疫力を上げ、何より加湿して鼻水を流しやすくする点で有効です。入浴後に片方づつ鼻をかむのを手伝ってあげるか、鼻水を吸ってあげることは、お薬を飲むことよりも効果的と思います。鼻をかめない小さなお子さんには鼻水を吸うチューブが薬局などで手に入ります。お風呂の後に吸ってあげましょう。最近は電動鼻吸い器も市販されています。学会のブースでも下の写真のような携帯用鼻吸い器が出展されていました(商品名:SooSoo)。チューブによる鼻吸いも結構疲れてしまうのでお勧めかもしれません。ただ、吸引用のチューブやアダプターを兄弟で使い回してしまうと、使った子にも感染させる原因になりますので注意してください。
感染症の殆どはお薬ではなく自分の免疫の力で治せます。必要なのは体調を整えるための適切な生活管理です。風邪は私たち医者やお薬の力ではなく、お子さんの免疫力と保護者の方の介護力で治っているのです。お子さんが風邪をひいてもがっかりせずに「自分の経験値を増やす大事な機会」と前向きに考えましょう。長引いてもこどもの特性を理解して焦らず根気よく付き合ってあげること、辛そうな時は無理をさせずにお家で大人しくさせること、風邪とは違う重要なサインを見逃さない目を養うことです。過去のクリニック通信も少しは役に立つかもしれません。参考にしてみてくださいね。