クリニック通信

2015年7月8日ゆきべえ

こんにちは。梅雨真っ盛りですね。庭の花壇は雑草軍団が元気です。

先日、日曜診療の後に結婚披露宴に出席しました。余興で歌う予定なのに診療が延びてしまい、開始から1時間以上遅れてしまいました。ご親族の方々にはご迷惑をおかけしました。

新婦は20年以上前、私の患者さんでした。その頃はとてもお転婆で元気だったのですが、小児科を卒業して数年後に稀有な神経難病を患ってしまいました。体がほとんど動かせず、自分で呼吸をすることも出来なくなりました。年頃の彼女としては苦痛と絶望の日々だったと思います。大学病院の集中治療室の彼女を目の前に私は言葉を失いました。長い闘病生活の上、ようやく退院して数年後に偶然出会った時、車椅子で人工呼吸器につながれているためにうまく声の出せない彼女に、私はやはりどう話しかければ良いのか分かりませんでした。それから10年以上経ち、年賀状やメールでやり取りをするようになりました。

彼女は過酷な境遇に負けませんでした。大学に入学し、治療を続けながらも頑張って勉強して無事卒業。その後も患者の会の会報誌に原稿を執筆し、取材に応じ、某アイドルグループのコンサートに行ったり、自立生活のプログラムに参加したり、そして、結婚です。旦那さんは穏やかで笑顔の絶えない包容力のある方でした。披露宴は同様に障害を持った方も参加され、小さいながらも今まで出席したどの披露宴より温かみに満ちたものでした。

久しぶりに会った彼女は、やはり、車椅子と呼吸器が必要でしたが、メールや会報誌を読んでいた私には昔と変わらずお転婆に見えました。もちろん、そうなるまでに私には想像もできないような辛いことを沢山、沢山経験しています。車椅子ではあるけれど、前を向いて誰よりも力強く自分の人生を歩いているように思えました。

小児科に居たころから私は彼女をゆきべえと呼んでいます。私はそんなゆきべえをこっそり尊敬しています。

このイラストは私の友人でクリニックのキャラクターデザインもして頂いてる月魚ひろこさん(http://homepage3.nifty.com/tsukio-hiroko/)に描いて頂いたものです。

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